0人が本棚に入れています
本棚に追加
その翌日、兄は二度と帰れない場所へと汽車で向かった。
駅の乗降場には「日の丸」を持った沢山の人がいた。
兄は何も言わず、敬礼だけをして汽車に乗り込んだ。
僕はその様子をただ静かに見ているだけであった。
そして汽車は動き出す。
二度と帰れない場所へと多くの若者を乗せて。
汽車が駅から去ったあと、乗降場では泣き崩れる人が沢山いた。
僕の母親もその一人だった。
その様子を僕は唇を噛みしめながら見ていただけだった。
最初のコメントを投稿しよう!