九投

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九投

 熱い熱い戦いをたくさん繰り広げて来た、嵐士の高校生活3年間が終わりを告げてから数年  嵐士は27歳になっていた。  前の人生とは違い高校卒業後に進んだ大学で  高校野球が大好きで甲子園常連校である習凌総合の二投流投手として有名であった、嵐士の大ファンと言う同じサークルに所属している同じ学年の女生徒から猛烈なアプローチを受けた。  恋愛関係に疎かった嵐士は戸惑いながらもその女性と交際を始め、その良好な関係を崩す事無く  大学卒業と同時に婚約、結婚を決め子供にも恵まれている。  すばるや大地もプロの世界で活躍をし、大地に至ってはメジャーにまで行っている。すばるがオフの日、大地が日本に戻って来た日で予定が合う日は連絡を取り合い一緒に飲みに行っていた。  嵐士は大学生活中に教員免許を取得し  そして  今では習凌総合高等学校の教師をしながら野球部の監督をしている。自分自身の成し得なかった『甲子園優勝』を教え子達に託したのだ。  そして日々、生徒達と共に汗を流していた。  そんな充実した日々を過ごしていた、ある暑い夏の日  嵐士は自宅のリビングで4歳になる息子と共にプロ野球の中継を見ていた。 「このホシノスバルって人は父ちゃんの友達なの?」  テレビに映るすばるを指差しながら嵐士の息子は言った。 「あぁ、そうだよ。この星野すばるって選手と、今は他の国で頑張ってる選手と父ちゃんは昔、野球で戦ったり一緒のチームで優勝を目指したりしたんだ。…実はなぁオマエだけに言うけど、父ちゃんは人生を2回体験しているんだ。だから、物心つく頃から野球の練習を始めてこんな凄い選手達と一緒に野球をやる事が出来たんだぞ。父ちゃんはオマエにも野球をやって欲しいなぁ」 「ふ~ん…? 僕トイレ行ってくるね」  嵐士の言う事が全く理解出来ていないであろう嵐士の息子は、興味が無さそうにトイレへと向かう 「…当たり前だよな。4歳のアイツには理解できないか」  嵐士は頭を掻き、苦笑いを浮かべながら息子の背中を見送った。  トイレの中  用を足している嵐士の息子はある事を考えていた。  …そうか……親父も人生を2回送っていたのか。……実は俺も38歳の時に2歳に戻ったからこの人生は2回目なんだよな…。親子揃って同じ体験をするなんて驚いたな…。でも、ゴメンな親父、俺は野球はやらない。俺の2回目は…  テニスでプロへ進んで  世界を目指す。
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