三投

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 二投流を駆使して右でも左でも安定した速球が投げられ、中学1年生にして既にほぼ全ての変化球をどちらの腕でも投げられる嵐士は、シニアに入団して3ヶ月後には背番号1を任される様になり、快晴とバッテリーを組む事となる。  中学校の部活では陸上部に入部し、下半身を徹底的に鍛えた。  シニアでは野球の猛特訓、学校では徹底的な下半身の強化。自宅では同じシニアのチームで捕手を務める快晴との投げ込みと自主練。この嵐士の頑張りにより、そのシニアチームは全国を目指せる程の強豪チームへと成長した。  嵐士が中学3年になった春の事。  嵐士が自分の部屋で腕立て伏せをして両腕の筋肉を鍛えていた時、部屋の扉をコンコンとノックする音が聞こえた。 「ん…?」  そのノックの音に気付くのが少しばかり遅れたせいで、すぐさま返事をする事が出来なかったのだがその嵐士の返事を待たずして、嵐士の部屋の扉は開かれた。 「嵐士、入るぞ」  嵐士の部屋に入って来たのは、嵐士達が住む県にある屈指の強豪校『習凌総合高等学校(ならしのそうごうこうとうがっこう)』の野球部で一塁手(ファースト)を務める、兄の快晴であった。 「兄貴、どうした?」  嵐士は腕立て伏せを中断する事なく、首だけを快晴の方向へと向けながら言った。 「あぁ、悪いな。邪魔して。オマエさぁ……」  そう言ったきり、快晴は黙ってしまった。 「うん? どうしたんだよ兄貴」
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