三投

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 中々本題を切り出さない快晴に対して嵐士は腕立て伏せを中断し、快晴の眼を見据えながら言った。  それに対して快晴は答える。 「オマエ…どこの高校に行くつもりなんだ?」  右でも左でも投げられる二投流。打者としてはスイッチヒッターの安打製造機。守備でも攻撃でも大きく活躍し、全国レベルのシニアチームに所属する嵐士は、県外の強豪校からたくさんの推薦を貰っていた。  その嵐士の行く末を兄である快晴は気になっていた。近い将来、自分達の学校を脅かす最も厄介な『敵』になる事を想像していたからだ。  しかし、そんな快晴の心配を知ってか知らずか 「俺は、習凌総合に行くよ」  嵐士は快晴と同じ習凌総合に行く事を既に決めていた。 「え…? オマエ…ウチに来るのか!? だってオマエ、甲子園常連校の横濱(よこはま)帝将大付属(ていしょうだいふぞく)からも推薦もらっているんだろ? ウチの高校は確かに強豪校かもしれないけれど、ここ数年、甲子園には行けていないんだぞ? 甲子園に行くのであればウチに来るよりも県外の強豪校に「だからこそ兄貴の高校に行くんだよ」 「え…?」  快晴は嵐士が遮った言葉の意味がつかみ取れず、言葉を失った。  …兄貴はこの強豪校に入っても、結局3年間甲子園には行く事が出来なかったんだ…。  だから…俺が……       
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