三投

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「兄貴の高校に入って、俺が兄貴を…甲子園に連れて行ってやるよ」  その嵐士の言葉を理解し始めた快晴の顔から、少しずつ笑みがこぼれだす。 「そ…そうか! オマエ、ウチに来るのか! イヤ~良かった。オマエが来てくれたらかなりの戦力になるしなぁ。俺もそうだけど、ウチの監督がオマエの行く先をかなり気にしてたんだよ。監督喜ぶぞ~…ってそれより嵐士! 俺が連れて行ってやる。とか偉そうな事言ってんじゃねーよ!」  嵐士が自分の学校に来る事が余程嬉しかったのか、快晴は止まる事無く話続けた。 「あぁ、悪い悪い。それよりもさぁ、兄貴」 「ん?」 「今から走り込みと坂道ダッシュ行こうよ」 「…オマエ、今筋トレしてたよな? 疲れていないのか?」 「大丈夫大丈夫! 早く行こう!」 「本当に練習好きだよな…」  快晴は部屋から出て行く嵐士の背中を見ながら、少しばかり呆れた口調で呟きその後を追い、嵐士の自主練に付き合った。  しかし  走り込みと坂道ダッシュという話だったはずなのだが、その後快晴は、嵐士の投げ込みと素振りにまで付き合わされたのであった。  そして嵐士の中学3年での最後の大会が終わり、その翌年の桜の花弁が散り始めた頃  嵐士は習凌総合高等学校の校門をくぐる事となる。  36歳最後の夜から約13年…。遂に高校進学まで来たか……  こうして嵐士の熱い熱い3年間は幕を開けた。
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