四投

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 …やはりな……  嵐士は主将の後方で、自身を睨み付ける数人の視線に気付いた。  俺の存在を快く思っていない控え投手達か。  確かに…俺自身、二投流で結構有名になっているからなぁ。来年の主戦投手(エース)を狙っている2年生の控え投手達からしたら気が気ではないだろうし、俺の事が気に食わない、という気持ちもわかる。でも、結局は弱肉強食の世界。悪いな先輩さん方、このチームのエースは先に俺がもらうよ。  もちろん、先輩達による後輩への部内虐めの様な事もあるだろうと想像したのだが  嵐士は前の人生では空手の黒帯を取得し、キックボクシング経験者。そしてその動きは『脳』が覚えているし、蹴りによる下半身強化以外にも上半身を鍛える為に空手の突きやシャドーボクシングのトレーニングも3年程前から行っている。  その時はその時、もし俺に手を出して来たりしたら…返り討ちにしてやるよ  などと物騒な事を考えたが、もちろん先輩に対して手を出すつもりなど毛頭なかった。  …なんてな、そんな事が無いように…絶対に俺の事をあなた方に認めさせて見せますよ。  嵐士は自身を睨み付ける2年生の控え投手達を見ながら、静かに口角を上げた。  野球部員達が練習をするグラウンドには、まだ微かに桜の匂いが漂っている。  その匂いを嗅いだ者達を、一瞬にして虜にしてしまうかの様な甘い香りを放つ桜の花弁が風に乗り、部員達の肩や帽子の上へと落ちて来る。  他の部活の練習中から生まれて来る大きな掛け声や、校舎内の音楽室で練習する吹奏楽部の奏でる旋律が聞こえ、野球部員達の練習に対する集中力を増長させていた。
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