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嵐士はその場で胡坐をかき座り、腕を組んで首を傾げた。
「あら、嵐士そんな所で何してるの?」
突如、部屋のドアの方向から自分の背中越しに声が聞こえた。慌てて振り返るとそこには、やはり母親が立っていた。
「わかったお腹空いたんでしょ~。朝ご飯作るから一緒に行こうね」
と、嵐士の返事を聞くよりも前に母親は嵐士を抱き上げた。
わッ!? 止めろ! 離せ!! 降ろせ!!!
流石にそれを口に出す事はしなかったのだが心の中では思いっきり叫び、思いっきり拒否した。しかし、その腕の中からはどうやっても逃れられないと悟った嵐士は
抗う事を止めた。
「嵐士、おはよ~」
居間のテーブルの前の椅子に座り、朝食を摂っていたのは嵐士の2歳上の兄
「涼風快晴」
であった。
快晴は母親に抱っこされている嵐士を見ながら朝の挨拶をした。
「よぅ、兄貴。おはョ……あ」
36歳の時の口調で思わず挨拶を返してしまった嵐士はハッとする。
ヤベ……俺今、子供らしからぬ言葉遣いをしてしまったのではないか? とりあえず何か弁解をしないと! このままでは、今の言い方は何!? と罵られ蔑まされやがてこの家から追い出され……
嵐士はとんでもなく斜め上の事を想像しながら、恐る恐る母親の顔を見た。
しかし、それは杞憂だった。母親も快晴も嵐士の発した言葉が聞こえていなかったらしい。特に気にする様子もなく快晴は目の前のご飯を食べる事を再開し、母親はその快晴の座っている隣の椅子に嵐士を座らせた。
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