四投

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四投

「新入部員集合!!」  習凌総合野球部に入部したばかりの1年生達が、掛け声をあげた主将の元へと駆け寄って来る。  長い事甲子園へと出場する事が出来ていないとは言えやはり強豪校、新入部員の数は40人を超えていた。 「今から監督のお話がある! その後は1人1人自己紹介をしてもらう! 良いな!?」 「「「「「ハイッ!!」」」」」    そして、長い長い監督の話が終わり、新入部員達の各々の自己紹介に入った。  1人、又1人と、どこの中学野球部出身か、どこのシニア出身か、そして務めていたポジションとこれからの希望のポジションを大きな声で監督と先輩達へとアピールを始めた。 「涼風嵐士です! 桃華(とうか)シニアで投手を務めておりました! 右でも左でも安定した速球と変化球を投げられる両投げで、スイッチヒッターの両打、習凌総合野球部でのポジションはピッチャー志望です!」  順番通り、嵐士も他の新入部員達と同じ様に自己紹介をしたのであったが 「桃華シニア? あの全国レベルの…?」 「それよりも…両投げ両打って?」  嵐士の事を知らない周りの新入部員たちはざわつき始めた。 「! …涼風嵐士、オマエがあの二投流の投手か。打者としてもスイッチヒッターで両打ち、そして快晴の弟だったな」 「はい!」 「…まぁ、頑張れよ」  ……俺はオマエに期待している。オマエの力で俺達を甲子園に…  監督から聞いたのか、快晴が話をしたのか。それとも中学時代の嵐士を見ていたのか。  習凌総合の新主将(しんきゃぷてん)は嵐士の二投流の事や両打の事、そして快晴の弟という事を全てわかっていた。  そして、最後に何かを期待するかの様な言葉を小さく呟いた。 「はいッ!!」  嵐士は、主将の言葉に対して更に大きな声を上げる。  そんな嵐士を見詰める主将の眼は、大型新人に対して心底期待をしている眼差しだった。  だが
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