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私は驚いて飛び起きた。
宅配などの思い当たる節はないのだけれど。
もしかして、紀貴さん!?
慌ててスマホを確認してみたが、特に連絡はきていない。
紀貴さんはとても律儀な人だから、連絡も無しに来るとは思わない。
私は居留守にしようと思って再びベッドに倒れようとした。
「瑠奈。いないの?」
心臓が飛び跳ねた。
「……紀貴さん?」
信じがたかったけれど、聞こえたのは紛れもなく、私の好きな紀貴さんの低くて穏やかな声だ。
でも少し、焦っているような気がした。
すぐに玄関に出ようかと立ち上がったが、思いとどまった。
待って!今は寝間着だし、すっぴんどころか泣き腫らしてグチャグチャな顔ままで会えない!
それに、会って何を話すの?いきなり連絡も無しに紀貴さんが来るなんて、紀貴さんらしくない。
やっぱり居留守を決め込もうとした。
だが。
「瑠奈、君に会えるまで待つよ」
そんな!!
ここはアパートの2階。そんなことをしたら紀貴さんがご近所さんから不審に思われてしまう!
私は玄関に走り急いでドアノブに手をかけた。
が、やっぱり紀貴さんの前では最低限の身だしなみを整えたいと思ったので、ドアの前に立ち止まり話すことにした。
「紀貴さん、すみません。私はいます。今すぐには会えないので、15分くらい待ってもらえますか?」
「もちろん、構わないよ」
私がいることはわかりきっていた調子だった。
紀貴さんの顔は見えないけれど 、笑っている気がした。いつもの微笑んでいる顔が目に浮かぶ。
「ありがとうございます。急いで終わらせます」
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