雨のち晴れ

3/7
201人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
 私は着替えと最低限の化粧をして、乱れたベッドを整えテレビを消した。  ようやく、紀貴さんを部屋にあげ、暖かいお茶を用意しようとしたら、紀貴さんに先にやられてしまった。  二人ともソファーに座り、お茶をひと口飲んだ後、少し沈黙が流れた。  話を始めたのは紀貴さんが先だった。  「体調悪いところに押しかけてごめんね」  紀貴さんは多分、私の嘘が分かっている。  「大丈夫です。でも、連絡してくれたらよかったのに」  「うん。でも、そうしたら断られる気がして」  困ったように苦笑いしてる。私は紀貴さんの顔をちゃんと見れなかった。  「……泣いてた?」  やはり薄化粧では目の腫れは隠せなかった。私は観念した。  「はい」  「理由、聞いてもいいかな?」  言えない。言ってしまったら、全てが終わりそう。  「……すごく言いづらいです」  「多分、僕に関することだよね?」  図星だ。  紀貴さんを相手にこのままやり過ごすことなんて、兎がライオンに戦いを挑むくらい無謀だ。  「わかりました。……話します」  私が先日目撃した一部始終を全て紀貴さんに話した。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!