雨のち晴れ

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 「君と出会う前、もう4年くらい前の話なんだけど、その時好きな人がいてね」  その話は初耳だった。  「大学の友達の共通の知り合いだったんだ。よく一緒に遊んだ。僕はその子が好きになって告白したら、振られた」  「振られたんですか!?…あっ」  思わず繰り返してしまった。紀貴さんが告白して振られるなんて有り得ないと思った。  「うっ、繰り返されると辛いな。うん、僕は付き合えない理由も聞いたんだ。そうしたら、あなたの隣にいられる自信がない。元カノさんに比べられたら、私はきっと耐えられないって言われて」  かなり落ち込んでいる様子だった。  「僕は比べたりなんてしないし、君が好きなんだって言ったんだけど、付き合えなかったよ。その後その子とは疎遠になってしまった」  「……」  「もう同じ失敗はしたくなくて、なるべく元カノの話は避けようと思った。写真とかはもちろん見せないように。でも危うく、同じ失敗を繰り返すところだったね」  まさしく、私もその人と同じことを思っていた。  けれど、それは紀貴さんが最も望まないことだとわかった。  「紀貴さん……」  「僕は今も同じ。瑠奈だけを見てる。過去の誰かと比べたりしないよ。そうじゃなきゃ、こんな情けない姿を晒さないからね」  参った、という風に笑っている。  愛おしくて、次は私から抱きしめた。  「嬉しいです。余裕のない姿が見れて」  「僕は恥ずかしいけどなぁ」  「私のほうが今まで散々恥ずかしいところ見せてます。紀貴さんのほうが足りないくらいですからね」  余裕が無くて焦ったり、落ち込んだりしている姿を見るのは付き合って1年経っているのに初めだった。  「体調が悪いのは嘘なんです。ごめんなさい」  「うん。わかってた」  「お詫びに、今からデートしましょう。何をするかは紀貴さんが好きに決めてください。何でも言うこと聞きますから」  「何でも?」  「何でも、です」  紀貴さんは腕を組んでしばらく考え込んだ。そして何か閃いた様子だった。
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