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高校時代の友人からひさしぶりにかかってくる電話なんて同窓会の知らせか、たいていこれだ。
「……おまえもとうとう年貢の納め時か」
おれは苦笑しながらつぶやいた。
『和哉、おまえ、古いなー。オヤジじゃねえんだからさ』
スマホの向こうで新田 佳祐がバカ笑いをした。
幸せなヤツはなにを言われてもおもしろいらしい。
「で、相手は?」
まったく興味が沸かなかったが、一応訊いてみた。
『実はさ……』
佳祐が告げた結婚相手の名はヤツが一度別れた女だった。
しかも、原因はヤツの浮気だったはず。
接待で知り合ったキャバクラ嬢とのことが彼女にバレて、逆鱗に触れたのだ。
「確か、向こうを相当怒らせて、別れたんじゃなかったっけ?よくヨリを戻せたな」
おれが思わず言うと、
『それなんだけどさ……でも……おまえはこんな話信じるようなヤツじゃないからなー』
佳祐は急に口ごもった。
「なんだよ、それ」
おれは鼻白んだ。
『ちょっと……「あるところ」に頼んでさ……』
佳祐は言いにくそうにつぶやいた。
「『あるところ』って興信所か!?」
おれはびっくりして訊いた。
元カノのことを引きずっていたのは知っていたが、そこまで思いつめていたとは。
『違うって!』
佳祐はあわてて否定した。
『……「運命の相手」に会えるっていうところに、だよ』
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