其の2

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「ねぇ、より子先生。先生が昔、タイガーマスクだった頃の話を聞かせて」 「く……空中殺法の練習が大変だったわ」 「フフフッ……飛べる訳ねーじゃん!」  まさや君は最近、ムチャぶりという空中殺法を覚えた。  私に嘘をつかせたい訳ではないだろうが「俺の振りに乗っかって来いよ!」という威圧感が半端ない…… 「ねぇ、より子先生。先生はボクとカズ君が溺れてて、1人しか助けられないとしたらどっちを助ける?」 「………………」  私は質問に答える事が出来なかった……  答えに悩んで立ちすくんでいると、まさや君のお母さんがお迎えに来た。 「より子先生。その答えはね、嘘でも2人助けるって言うんだよ。先生はまだ新人だからしょうがないけど、もっと心の勉強をした方が良いかも知れないね。じゃ、また明日ね!」  そう言ってまさや君は、お母さんと手を繋ぎながら帰って行った。  私は幼稚園児に人としての心構えを教わっている保育士、小松崎 より子24歳…………独身。  今日も出会い系サイトに手が伸びそうだ……
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