其の3

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「ボクのおちんちんは見せ物じゃないんだ。プールで全裸の子供が走り回っていたら、パンツを履きなさいって教えるのが大人の役目だよ。それに、さっきのケロッグのくだりだって、わざと間違えたのに何でちゃんと指摘しないの?」 「ごめんなさい」 「ボクが身を持って、より子先生を教育してあげているのに、ガッカリだよ」  そう言ってまさや君は、呆れたように後ろを向いてパンツを履いた。 「より子先生。世の中っていうのは、先生が思っている以上に不条理なものなんだ。年下の上司に説教される事なんてざらにあるんだよ」 「……はい」 「ボクに言われてめげているようじゃ、この先やって行けないからね」 「わ……わかりました」 「ボクだって言って分からない人間には、最初から何も言わないよ。より子先生が頑張れる先生だと思っているから、体を張って教えているんだからね」  私の中には反省という言葉しか思い浮かばなかった……  先生として……いや、大人として、教育する者の心構えが甘かった事に、改めて気付かされた……それも幼稚園児に。 「でもね、より子先生。ボクがきつい事を言うのは愛情の裏返しなんだからね。決して憎くて言ってる訳じゃないって事だけは、勘違いしないで欲しいんだ」  ちょうどこのタイミングで、まさや君のお母さんがお迎えに来た。     
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