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ある土曜日のうららかな昼下がり。
天野 志郎は、某高級ホテルのロビーから連なるティーラウンジで、一点の曇りもなく磨き込まれた、巨大な一枚ガラスの窓の外に広がる庭園を見つめていた。
……いや、違う。
窓の外ではなく「巨大な一枚ガラス」を見ていたのだ。
……こんな大きなガラス、搬入するのたいへんだったろうなぁ。
……いや、それより、こんな壁一面に設置して、耐震はクリアしてるのだろうか?
……いやいやいや、こんな一流ホテルが「耐震偽装」なんてするわけないだろー。
……だけど、そういうのって得てして、「えっ、こんな大企業がっ!?」ってとこが出来心でやっちまうんだよなー。
こんなしょうもないことを考えていたのは、なにも彼が設計事務所を営んでいるからではない。
約束の時間よりかなり早く着いてしまって、ただただヒマだったからだ。
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