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そもそも氷蘭は、俺よりも遥か昔に生きていたらしい。この時代のものをあまり理解していないから、それは間違いではないと思う。歴史ある街や資料館、寺を巡ってみたりしたがコイツの手がかりは無し。いざとなれば俺が力で祓ってしまえばいいのだが、罪のない妖を強制的に祓うのはあまりしたくない。
……まぁ、今は依頼の手伝いを少しはしてくれるようになったし、もう少しだけなら家に置いてやってもいいか。
「氷蘭」
「どうかしたのか?」
「……今回の調査、役に立ったら遊んでやらなくもない」
「え、ほんとか!?」
ぶっきらぼうにそう言えば、氷蘭は目を宝石のように輝かせて詰め寄ってくる。距離が近い、と追っ払いながら「役に立ったらな」と答えれば、氷蘭は嬉しそうにふわふわと宙を舞い踊った。
それから三十分後。待ちわびたバスがやってくる。すっかり夢の中に居た夏原さんを起こし、バスの中に乗り込んだ。
今回の依頼はどれくらいで終わるだろうかと、俺は御守りを見つめながら思う。
御守りは、一瞬だけ不思議な光を放ったような気がした。
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