記憶を探して

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「またこれで妖が減ったんだな」  背後で氷蘭の声がした。振り返れば、仁王立ちした氷蘭が居る。 「あぁ。見つけてやれて良かったよ」 「ほう。とても妖嫌いの言葉には思えないな」 「……そうだな」  挑発するような氷蘭の言葉に、俺は自身の右手を見つめた。  妖が憎いことに変わりは無いし、今後この思いが覆ることはないだろう。ただ、少女のようにこの世を彷徨うだけの妖に罪はない。  俺はただ、そんな妖たちに同情をしているのかもしれない。こうして俺が祓い、成仏させることによって彼女らが救われるのではないかと感じている部分はある。でもそれは結局のところ俺の身勝手で、最終的に妖を全て祓うという俺の目的に繋がる踏み台でしかないのかもしれない。 「京真。私はたまにお前がよく分からなくなるよ」 「今更だろ」 「まぁ、そうかもな。お前が何故そこまで祓い屋を続けたがるのか私は知りたい」 「絶対教えねぇ」    不敵な笑みを浮かべながら、普段とは比べ物にならないくらい真面目な声音で氷蘭は言う。だが俺は彼女に話すつもりはない。復讐みたいな動機で、しかも全ての妖を祓う目的でなんて言ったら、氷蘭はどういう反応をするのだろうか。 「何で!?京真のケチ!頑固!冷酷!」 「何故そうなる!アホなお前に言われたくねぇ!」 「私はアホではない!この時代のことを知らないだけだ!」 「それをアホって言うんだよ!」  あぁまたいつものが始まった。  言い合いをしながら俺は呑気にそう思う。この妖はつくづく俺に突っかかってくる。早々に祓ってやろうかとも思ったが、今はそんなことをしている場合ではない。 「チッ……食い終わったなら行くぞ」 「何処に?」 「御守り屋を探すんだよ!話聞いてたかテメェ」 「聞いてなかった!」  舌を出しながら笑っても全く可愛げはない。  俺はこの人の話を聞かないアホな妖を放って歩き出した。目指すはたこ焼き屋の男に聞いた御守り屋。  そろそろ夏原さんも戻ってくる頃だろうし、早急に手がかりを見つけたいところだ。  陽は既に西の空へと向かおうとしている。
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