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「なんだ京真、もしや羨ましいのか?」
「んなわけあるか。さっさと行くぞ。日が暮れる前に全部終わらせたい」
氷蘭は小馬鹿にしたような薄笑いを俺に向けた。相手にするのも面倒で適当に流して俺は小屋の中へと入る。
小屋の中は、殺風景だった。普段は使われていないのか、掃除はまともにされていないように思える。木屑や埃が木の床に積もっている。奥の方に木製の長机が置かれていているだけで、それ以外は特に目ぼしいものは無さそうだった。
長机の前には金髪の男が居た。俺に背を向けて、手元で何かを作業しているように思えた。
「すみません、お尋ねしたいことがあるのですが」
「んー?あ、お客サンっすか?」
俺が問いかけると、金髪の男は不思議な顔をして振り返った。三白眼を真ん丸にして俺を見つめている。
「そんなところです。あの、今何していらっしゃったんですか?」
「あー、店番っすよ。親父が出店に飯買いに行っちまって」
金髪の男は困ったように苦笑しながらそう言った。呆れたように頭を掻きながら遠くを見つめる。
「全く。俺に店番させるとはどういう神経してんだかねぇあの親父は」
「通りでお店を開いてるわけではないんですね」
「うちはひっそりと売るのが定番なんでね。客もあんま来ねぇし。毎回開く場所も気まぐれなんすよねぇ」
「……ということは、此処が噂の御守り屋ですか?」
腕を組みながら男がつらつらと語る。男が簡潔に説明した店の概要は、たこ焼き屋の店主が言っていた店の特徴と似ている。唯一異なるのは店主の年齢だが、この男はさっき店番と言った。この男の父親となれば、じいさんと呼ばれる年齢でもおかしくない。
「アンタ、よく知ってんな」
「さっきお聞きしまして」
「なるほどー。どうだい、少し見ていくか?」
「あ、えっと……今日はお尋ねしたいことがあっただけで」
「なんだ、買いに来たんじゃないんすね。まぁいいや、何を聞きたいんすか?」
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