神様の御守り

7/15
前へ
/62ページ
次へ
「もちろん御守りの事に決まっているであろう!」 「うわっ……」  耳元でいきなり弾けるような声がした。俺は片耳を塞ぎながら隣を睨みつける。夏原さんに抱き着いたままの氷蘭が大声でそう尋ねるが、もちろん金髪の男にその声は届いていない。 「ん?どうかしたんすか?」 「あー、何でもないです。ところで、見てもらいたいものがあるんですよ」  夏原さんにじゃれている氷蘭は放っておいて、俺はジャケットの裏ポケットから御守りを取り出す。それを男に差し出すと、男は眉間に皺を刻んで御守りをじっくり見つめた。 「お客サン、うちで御守り買ったことあったんすね」 「いや、それ俺のじゃないんです。事情があってその御守りの調査をしてまして……」 「ふーん。こりゃうちで売ってる御守りと同じっすよ。あ、でもなんかちょっと違う気もする……」  金髪の男は顎に手を当てて唸る。何か思い当たる節があるのが、御守りを何度も翻している。 「わっかんね。あ、うちで売ってるやつと見比べてみます?」 「じゃあ、少しだけ……」  男はそう言いながら、机に幾つか置かれている御守りを俺に見せてきた。念のため自分でも見ておきたい。夏原さんの御守りを受け取り、俺は机の上の御守りと交互に見比べてみる。 「どうっすか?だいたい一緒な感じっすよね?」 「そうですね。というか同じじゃないですか?」 「いいや。その御守りは何か特別な感じがあるんすよねぇ……」  はっきりとは言えないんすけど。と男は夏原さんの御守りを指差す。  特別な感じか。確か、最初に氷蘭に御守りを見せた時も同じようなことを言っていた。氷蘭に目を向けると、真剣な顔で俺と目を合わせて頷く。
/62ページ

最初のコメントを投稿しよう!

177人が本棚に入れています
本棚に追加