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「特別な感じ……上手く言葉には言い表せないって感じですか?」
「そんなとこっすねぇ」
夏原さんの御守りを見て男はため息を吐く。どうやら、これ以上は聞いても何も情報は得られなさそうだ。この御守りに何かあることは分かったが、特に収穫は無い。移動して別の人に話を聞くべきだろうな。
そう俺が諦めかけた時だった。
「……もしかしたら、“神様の御守り”ってやつっすかねぇ」
「神様の御守り?」
突如男が口にしたその言葉。何やら手がかりの気配だ。俺は復唱して詳しい説明を促す。
「あぁ、なんか神の力が込められた不思議な御守りがあるって噂なんすよ」
「へぇ……」
「実はうちで扱ってる御守りも、歴史ある陰陽師の力が込められてるって話なんすよね。胡散臭いかもしれないけど、たぶん本当っす」
「御守りって、貴方が作ってるんですか?」
「まさか。作ってるのは別の人っすよ」
尋ねてみれば、男は苦笑しながら手をぶんぶんと振った。
「じゃあ、どなたが製作してるんです?」
「確か、どっかの神社の神主じゃなかったかな。なんでも、陰陽師の末裔だって話っすよ。信じがたい話っすけど、かなりの金と権力の持ち主って噂だし、あながち間違いじゃないかもしれないっすねぇ」
店に並ぶ御守りはその地位の高い神主とやらが製作しているようだ。もしこの店の御守りと夏原さんの御守りが同じものならば、その神主に話を聞ければ手がかりを得られるはずだ。
「その神主の名前は?」
「さぁねぇ。俺はそこまでは知らないや」
あくまでも俺は今限定の店番なんで、と男は頭を横に振った。
「おい京真」
「……なんだ、今ここで話すと怪しまれるだろ」
「お前、ゆづかのことは聞かなくていいのか」
「へ?」
「御守りにばっか気を取られて全然ゆづかのことを尋ねていないではないか」
「……」
確かに言われて見ればそうだ。夏原さんが持っていた唯一の手がかりだったから、御守りの詳細を辿れば必然と記憶にありつけるかと思っていた。
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