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少女の汚れのない瞳に見つめられながら、俺はそう問いかける。どんな些細なことでも手がかりがあれば、調査の難航を少しは避けられる。
「えっと……これ、くらいですかね」
少し考える素振りを見せた後に少女が取り出したのは、一つの薄汚れた御守りだった。二重叶結びが施された赤い御守りだ。蝶のような神紋の下には『御守』と書かれている。至って普通の御守りに見えた。裏返してみるが、神社名は削れてしまっているのか読めなくなっている。
「なるほど。分かりました、この御守りを頼りに色々探してみましょう」
「ほ、ほんとですか!?ありがとうございます……!」
手帳をジャケットの裏ポケットに仕舞い、俺は立ち上がった。少女に微笑みかけると、少女は勢いよく立ち上がり目を輝かせる。
「いえいえ。では、準備が整い次第行きましょうか。えっと……」
そこで俺は少女に名前を尋ねていないことに気がついた。言い淀むと、少女も気がついたのか、ハッとした様子で口を開く。
「も、申し遅れました!私、夏原ゆづかと申します!」
「夏原さんですね。俺は柊京真です。この度は、御依頼ありがとうございます」
互いに自己紹介をして握手を交わす。
夏原さんにもう少しだけここで待機してもらう旨を伝え、俺は自室へと戻った。財布と携帯、それから御札を数枚だけ小さな鞄に入れて肩にかける。
先程夏原さんから受け取った御守りをじっと観察するが、うちの神社や周辺地域の神社や寺では見たことがないものだった。
「おい、氷蘭」
「何か用か?もしや、ようやく私を頼ることにしたのか!?」
「そうじゃねぇ。この御守りがどこの神社のヤツか分かんねぇか?」
夏原さんと会話をしている間、ずっと傍らで話を聞いていた氷蘭に御守りを見せる。氷蘭はそれを受け取ると、隅々まで目を凝らした様子で御守りを調べる。
「この辺りのものではなさそうだな。うむ……変わった神紋だな」
眉間に皺を寄せて唸る氷蘭の言う通り、御守りに刻まれた神紋は今までに見たことがない。通常は名家の家紋のようなものが多い気がするが、この御守りには蝶のような形が刻まれているだけだった。
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