第4話「王女ふたり」

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第4話「王女ふたり」

 輿(こし)入れの日は、ひと月の後と決められた。  これは随分と早い。  大陸の慣例では、王族の新婦は少なくとも三カ月の間は、婚礼の準備に時間を取る。  国事多難の折であるということで早められたのであった。  いったんこうと決めてしまったら、サリアはもう泣かなかった。  サリアは、ただ蝶よ花よと甘やかされて育てられた箱入りではない。  さる戦では、前線に立つようなことはもちろん無かったけれど、後方で負傷者の看護に自ら当たるほどの男勝りだった。  ある日のこと、サリアは珍客の訪問を得た。 「マイナ様」  この国に滞在中の、スメラオミの王女である。  王女はすっきりとしたショートの黒髪を持ち、短衣を身につけ、剣を腰の後ろに差していた。 「こんにちは、サリア様」  王女は十五であるが、成熟しかけたボディラインを持ち、まるで男のような格好をしているにも関わらず、匂いやかな女性だった。  彼女と話したことはあまりないサリアである。  話そうにも、マイナはほとんど王宮にいなかった。聞いたところによると、ここシシュハの王であるサリアの父に許可をもらって、市街に出て何が面白いのか市民の暮らしを見ているとのことだった。     
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