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「ご婚約おめでとうございます」
マイナは微笑んだ。
その口元から光がこぼれるようである。
本当におめでたいものかどうか同じ女なら分かるはずだと、サリアは思ったが、スメラオミ側の人間としては、そう言う他に無いだろうということも分かっていた。
「兄がどういう人間か、ご存知になりたいかなあ、と思いまして」
マイナが言った。
サリアは、勢い込んでうなずいた。
こういう気遣いは同じ女であるからこそでだろう。
「兄と言っても、わたしとは母が違いますけれど、小さい頃からわたしのことを可愛がってくださいました。お気持ちのお優しい方です。他国から一人いらっしゃる姫君を無下に扱うような方でないことだけは、はっきりと申し上げられます」
マイナの口ぶりはよどみない。
その口調の涼しさにサリアは、少しホッとするものを覚えた。
「あと、結構な美形ですよ。兄のことをそんなふうに言うのはためらわれますけれど」
マイナはいたずらっぽく言った。
サリアは、どう反応すればよいか分からなかったので、あいまいに微笑んでおいた。
「マイナ様はお強いですね」
サリアは言った。
元敵国に来てもなお堂々としているのはどういう心構えによるものか知りたかった。
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