8人が本棚に入れています
本棚に追加
第5話「心を決める出発前」
出発の三日前となった。
既に、花嫁を迎えるスメラオミの使者が到着している。
この間に、コオリ、ナナハラ両国との間には国境付近で小競り合いがあったようだ。
そんなバッドニュースを聞くにつけても、サリアの気持ちはいよいよ固まった。
スメラオミの王と結婚する。
そうして、スメラオミとシシュハの間にしっかりとしたつながりを作る。
シシュハの役に立つにはサリアにはこれしかないのであって、それこそが王女として生まれた身の為すべきことだと思えば、腹も据わるというものである。
――……でも、ステキな人だといいな。
ぷつぷつと湧く気持ちを、サリアは振り払うように、首を横に振った。肩を過ぎるふわふわとした金色の髪が、午後の光を受けて軽やかに舞った。
「大丈夫かい、サリア?」
自室である。
近くから聞こえて来た声の主に、サリアは慌てたように、うなずいた。
男性のように背の高い女が近くにいる。
カンナ。
サリアの侍女である。
最初のコメントを投稿しよう!