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その様子を見ていた王は、我が娘が意外に抜け目ないことに驚いたが、
「后であれば、我が国のお役に立てることもあるでしょう」
そう続けられた言葉に、胸をつかれた。
最高位の妻なら、王にも影響力を及ぼせるかもしれない、と言っているのである。
「ちこう」
父の言葉に応じて、サリアはしずしずと玉座まで歩いた。
「いくつになった?」
「十三です」
「大きくなったな」
サリアは、父の大きな手が自分の頭を撫でるのを感じた。
それは随分と久しぶりな行為で、サリアは、心にくすぐったさを覚えた。
「断ってもよいのだぞ」
王は目つきを柔らかくして言った。
サリアは静かに首を横にした。
「我が身がお役に立つかもしれない機会です。断るなどと」
「もしもそなたを粗末に扱うようなことがあれば、スメラオミの若造をけして許さぬ」
父が険しい声を出すのに対して、サリアは、
「お父様。わたくしの夫になる方の悪口はどうぞお控えください」
言った。
「こやつ」
王の厚い唇がニヤリとする。
サリアは、笑顔を作った。
王が言う。
「詳細は大臣とスメラオミの使者にはかり、これから決める。おって連絡しよう」
サリアは、元の位置まで退くと、両膝をつけて、
「つつしんでお待ちいたします」
と言って、頭を下げた。
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