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先の戦争での味方同士が争うことになったのである。
孤立したシシュハの運命は暗い。
そこへ光をともしに来たのが、かつての敵国スメラオミの王女であった。
王女は自ら使者として現れ、
「昔の恨みを忘れて、仲良くしませんか」
と申し出てきた。
同盟を結びたいというのである。
シシュハ内には、呆気に取られる者がほとんどだった。
つい一年前に殺し合っていた相手である。
その手を取るなどと。
しかし、王はそれを了承した。
他に選択肢が無かったのである。
「国内の信頼を失いますぞ」
忠告する臣も多かった。
シシュハの国民は、スメラオミの兵士に大勢殺された。
家族を殺され、スメラオミのことを憎んでも憎み足りぬと思っている民は多い。
そんな中でスメラオミと手を組めば、王に対する失望が広がり、国内が乱れることも十分にあり得る、と臣下たちは言ったのである。
王も、そんなことは百も承知であったが、それでもそうせざるを得なかったのは、やはり国のことを考えてのことであった。
このままではまず確実にシシュハは滅びる。
亡国の民ほどみじめなものはない。
人はよるべがなくては生きていけないのである。
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