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途端にほろりとした涙を、サリアは袖で乱暴に拭った。
「……子どもの頃、オレと結婚すると言っていたな」
兄が優しい声を出した。
「ごく最近まで、本気でそう考えていました」
サリアは笑った。
「教えてくれ、サリア。オレは一体何だ?」
「勇者です。シシュハ一勇気がある方」
「お前がそういうのならそうなのだろうな」
兄は息をつくようにすると、
「いずれの再会を祈ろう。元気でな」
言った。
その顔はすっきりと晴れて、いつもの兄だった。
「お兄様も」
サリアが応える。
それが兄妹の別れであった。
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