第3話「兄妹の別れのとき」

3/3
前へ
/122ページ
次へ
 途端にほろりとした涙を、サリアは袖で乱暴に拭った。 「……子どもの頃、オレと結婚すると言っていたな」  兄が優しい声を出した。 「ごく最近まで、本気でそう考えていました」  サリアは笑った。 「教えてくれ、サリア。オレは一体何だ?」 「勇者です。シシュハ一勇気がある方」 「お前がそういうのならそうなのだろうな」  兄は息をつくようにすると、 「いずれの再会を祈ろう。元気でな」  言った。  その顔はすっきりと晴れて、いつもの兄だった。 「お兄様も」  サリアが応える。  それが兄妹の別れであった。
/122ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加