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保健所の職員は、困惑していた。
「そう言われてもねえ。苦情があるのにほっとけないよ。それに、今は君の犬じゃないんだろう?」
「今でも僕の犬なんですよ!ただ、少し長めに家出してただけで。とにかく、犬を飼える部屋を探すまで待って下さいよ」
僕はそうすがりついて、経緯を一から説明した。
職員のおじさんは、ただ黙って話を聴いてくれた。
しばらく、うーんと唸っていたが突然口を開いた。
「おじさんも昔は犬を飼っていたんだ。病気で亡くなってしまったけどね。それ以来、生き物は飼わないでおこうと決めたんだ。
だって、死んで行く姿を見るのは余りに忍びない。
でも、君とこの犬は絆が強いんだねえ。
君の宝物を持って行くなんて、普通は考えられないよ。君の事がよっぽど好きだったんだな。
もしかしたら、君が叔母さんの家で暮らせる様に、身を引いたんじゃないかな?この犬は」
僕は考えもしなかった。
僕の為に家を出ていったの?
思いを断ち切らそうと、ロケットを持って行ったんだとしたら……
僕は、床にへたり込んでいるカーマインを、じっと見つめていた。
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