3

2/3
前へ
/12ページ
次へ
公園は大きな木が茂っており、成る程、雨風はしのげそうだ。 すると奥の茂みに、コンクリートの土管が横倒しになっているのが見えた。 その犬は、そこにいた。 顎を前足に乗せて、目を閉じている。 「カーマイン。お前、カーマインなのか?」 僕はそっと近づいた。 すると、犬は急に頭を上げて僕を見て「クゥーッ」と弱々しく鳴いた。そんな掠れた声は、年老いた身体を物語っていた。 そして犬の頭を撫でた時、首に掛かっている細い鎖が目に入った。 これは?まさか! それはペンダントだった。 錆びついてはいるが、間違いない。 僕はそのロケットの蓋を開けてみた。 そこには、お父さんとお母さん、それに幼い僕とカーマインが写っていたのだ。 あの時、あれだけ探したのに出てこなかったのは、カーマインが持って出て行ったのだ。 僕はカーマインに抱きついていた。 「何でだよ。何で勝手に出て行ったんだよ」 僕はいつの間にか泣いていた。 あの頃の記憶が蘇ってきて、まるで時間が止まったかの様にカーマインを見つめた。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加