不審な車

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  だけど正直、心配や善意の気持ちだけで彼女を家に招き入れたわけではない。 彼女の事情を詳しく知ることが出来るチャンスだ…という思いもあった。 『いただきます』 『どうぞー』 すぐに温かいコーヒーを出すと、彼女はホッとしたようにそれを口に運び、ひと息ついてから向き合う私に言う。 『本当に亜紀さんって優しいですよね』 そして笑顔でジッと見つめられた。 くっきり二重のパッチリした瞳。 長いまつ毛はしっかりと立ち上がっていて、大きな目をさらに際立たせている。 『私も亜紀さんみたいな女だったら、大くんみたいな素敵な旦那さんと結婚出来たかもしれないのになぁ…』 『えっ?』 『結局は私がダメ人間だから…男を見る目もなく子供出来たからって結婚して…離婚して。やっと離れられたと思ったのに、それでもまた、さっきみたいに亜紀さんに迷惑かけるようなことになって…』 『迷惑だなんて…そんな…私は別に…』 潤んだ瞳で言われ、思わず言葉に詰まる。 もしかしたら彼女は大地に気があるのかもしれないと思ってしまってたけど… ひょっとしたら、実際は大地個人にではなく、優しい、良い旦那さん像に羨ましさみたいなものを感じているだけなのかもしれないとふと思った。
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