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『運命の人じゃないなって感じながら一緒にいるのって、キツイじゃないですか〜』
『ま、まぁ…そうかもしれないけど。他には、何か理由はなかったの?』
さらにそう問うと、指先でクルクル髪を触りながら話を続けた。
『んー、常識とかマナーとか?小さいことにもいちいちうるさくて。おまえはおかしいおかしいって何でも自分基準でモラハラがすごくて』
『…モラハラ』
モラハラとは、モラルハラスメントの略だ。
モラルとは倫理や道徳といった意味で、ハラスメントは嫌がらせという意味。
つまり、道徳や論理に反して精神面に対する嫌がらせのことをいう。
暴力行為などではなく、言葉や態度で相手に嫌な思いをさせることがモラハラに該当する、と以前テレビで見たことがあった。
相手を無視する、暴言をはく。
睨む、嫌みを言う、ののしる。
そういった類のことを言うらしいけれど、だとしたら暴力って言っていたのは言葉の暴力ってこと?
『モラハラって、言葉だけ?殴られたりとか…他にもそういうのは?』
『あー、ありま……したよ!あ、ほら!ここの傷とかも、そういうので出来た痕で』
彼女は思い出したかのようにそう言うと、長袖の袖をめくりチラッと古傷を見せてきた。
それは、軽い怪我で出来るような痕ではなかった。
はっきりとわかる縫い痕は、十針ほど縫ったのではないかと思うくらいの傷痕で。
彼女はケロッとした顔で見せてきたものの、これ以上は突っ込んで聞けない。
そんな気持ちにさせられた。
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