不快な鼓動

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私達の住んでいる住宅街は、ファミリー層向けに開発されたこともあり、十世帯ほどの人がほぼ同時期にこの場所で新生活を始めた。 一生暮らす場所だからと、いろいろな物件を見たり土地を見に行ったけれど、悩みに悩んでこの家を買ったのは正解だったと思う。 幼稚園や保育園、公園なども近隣に充実しているし、子育てもしやすいこの街はとても住みやすくて心地良い毎日を送れている。 そしてそんな毎日を送れるのは、頼りになるママ友。 同い年の景子こと、藤沢景子。 二歳年下の玲ちゃんという中島玲奈。 この二人がいることで、その心地良さは倍増だった。 そしてそれは、夫である大地も同じだったと思う。 景子の旦那さんの藤沢勇太、通称勇ちゃんも私と大地と同い年で。 二人も私達と同じように職場の同期として出会い結婚に至ったらしく、色々と共通点もあったおかげで夫婦共々話が盛り上がりすぐに仲良くなった。 玲ちゃんの旦那さんの慎ちゃんこと、中島慎吾もそう。年齢は私達よりも二歳年上だけど、アパレル関係のデザイナーをしているだけあって、見た目はすごくお洒落で若々しくて。 近所で度々顔を合わせるうち、自然と話をするようになり次第に仲良くなっていった。 住みやすく居心地の良い住宅街。 家族ぐるみで付き合える仲の良いママ友やパパ友。 大変な子育ても、皆がいるから毎日楽しくやれる。そんな恵まれた環境に、改めて幸せを感じていたけれど。 「あ、そういえば、今日うちの隣のアパートに引っ越してきた人、午前中に見かけたんだけどさ」 「あ、それ私も布団干しながら見たよー!幼稚園児くらいの子供いたよね?」 揺るぎなかった幸せを壊していく悪魔は、もうすでに…すぐ近くまで近付いてきていた。
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