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 放課後、彼女は図書委員の為図書室に居た。  朝以降彼と話すことはなく、きっと気を遣ってくれたか一種の物珍しさで話し掛けてくれたのだろうと思いながら彼女は本の貸し出しや新書の整理などをしばらくしていた。  数時間後、それを終えると自らもまた気になる本をいくつか借りて図書室を後にし、鞄を取りに戻ると教室に一人座っている生徒が目に入る。  その横顔はいつも楽しそうにクラスメイトと会話する見慣れた姿ではなく、どこか真剣な表情で集中して本を読み進めている様子で真面目なギャップに一瞬ドキリとした。  邪魔をしないように静かに後ろを横切り、自分の席の荷物を取るとちょうど本が閉じられて彼の顔が横を向いた。 「図書委員終わったんだな。良いタイミングで読み終わった、返すよ」   すごく面白かったと弾んだ声で言われ、安心しながら彼女は本を受け取った。まさか自分みたいに1日で読んでしまうとは思っていなかったので内心びっくりもしていた。 「犯人意外過ぎてびっくりしたよ。トリックもすごかったし、読むの止められなくてさ」 「こ、この作家のミステリーはどれもおすすめで…私もまた借りてきて…あ、読みますか?」 「いいのか?」  こくりと頷くと借りてきた内の一冊を彼に手渡した。それから彼女と彼は放課後、気付けばおすすめの本を見せ合い、本の話題で話すようになっていった。
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