仮面を外して

破

　彼女は彼の明るくていつも笑顔で誰とでも仲良く接している姿に苦手意識もあり、憧れもあった。

　自分が自然に人に見せることが出来なくなった笑顔がいつも彼にはあり、少しずつ話すようになって不思議に思っていたことをふと彼女は口にしていた。

「いつも楽しそうだね」

「そう？」

「いつも笑ってるから…」

　突然こんな風に言うのはおかしいかなと気にして言葉を選びながら喋っていった。

「私はそんな風にうまく笑えない。人とうまく喋れないから…いつもすごいなと思ってて」

　彼女は彼と話すようになってから少しずつではあるが変化していた。自分からはうまく喋れないが周りにうまく馴染めないかと挨拶を試みようかと思ったこともあったが彼以外のクラスメイトとはそこまで踏み出せずに居た。

「笑うの別に意識はしてないよ？何か自然にこんな感じだし。でも俺昔と比べたらかなり変わったかも。小学生の時なんて弱くてさ、いつも泣かされてたし」

　苦笑を浮かべながらも懐かしそうに昔のことを話す彼の言葉を彼女はおとなしく待った。