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「小学生の時はいじめられっ子でさ、いつもガキ大将みたいなでかいのに泣かされてた。女の子に助けられたりして情けなかったな」
今はクラスで人気な彼にもそんな過去があったなんて今の姿ではとても信じられなかった。
「その時にさ、女の子が割って入ってガキ大将から助けてくれたことがあったんだけど…女の子の方が酷いこと言われてさ。あの時助けられなくてすげぇ後悔したんだよな。その後親の仕事の都合でその子引っ越しちゃってお礼も何も言えなくてさ」
「酷いことって?」
「…笑顔が気持ち悪いって」
言葉が出てこなかった。薄々、なんとなくだが昔の出来事と彼の言葉が重なっていたが偶然だろうと思っていた。
「で、中学はそのガキ大将とおんなじだったからあんまりでかい顔出来なかったけど高校は違うとこになって眼鏡をコンタクトにしたり、髪型変えたりして頑張っちゃって」
高校デビューというやつなのだろう。彼は元々今のように完璧ではなかったのか…まだ信じられずにいた。
彼女は自分の記憶の中に居るガキ大将と思われるいじめっ子といじめられていた男の子の記憶を辿っていた。酷い言葉を自分に浴びせていたいじめっ子の姿はよく思い出されていたが、いじめられていた男の子の姿はとてもうろ覚えで名前も顔もはっきり覚えていなかった。
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