○○くん

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○○くん

私の田舎はいわゆる限界集落で、小学校などは一学年につき一学級が普通だった。 クラスメイトも血縁が多く、幼稚園以前からの顔見知りも多い。 だからこそ家族のように親密に付き合いがあり、同窓生達とは大人になった今でも自宅を行き来する仲だ。 今日は、特に親しい友人サナエと自宅に集まる約束だった。 「ねえ、これ覚えてる?」 サナエが家を訪れて開口一番、バッグから一冊の本を取り出しそう言った。 それは私達の小学校卒業アルバムだった。 「やっぱり皆小さいね」 「当たり前だよ、12歳だもん」 「大きくなったよね、私達も」 口々に感想を言い合いながらページを捲っていく内に、ふとした疑問を口にしてしまった。 「これ…誰だっけ」 私は一人の少年を指さした。 「え?」 サナエは首を傾げる。 「○○くんじゃない」 「だ、誰?」 私も首を傾げた。 「覚えてないの?そりゃ、変な時期に転入して卒業前に転校しちゃったけど」 「でも、あんたしょっちゅう口喧嘩してたじゃん」 サナエはそう言うと○○くんの話題から離れ、最近結婚した友人の話に移った。 私も話の流れに乗ったが、○○くんという少年の事は心の片隅に引っ掛かったままだった。
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