1人が本棚に入れています
本棚に追加
○○くん
私の田舎はいわゆる限界集落で、小学校などは一学年につき一学級が普通だった。
クラスメイトも血縁が多く、幼稚園以前からの顔見知りも多い。
だからこそ家族のように親密に付き合いがあり、同窓生達とは大人になった今でも自宅を行き来する仲だ。
今日は、特に親しい友人サナエと自宅に集まる約束だった。
「ねえ、これ覚えてる?」
サナエが家を訪れて開口一番、バッグから一冊の本を取り出しそう言った。
それは私達の小学校卒業アルバムだった。
「やっぱり皆小さいね」
「当たり前だよ、12歳だもん」
「大きくなったよね、私達も」
口々に感想を言い合いながらページを捲っていく内に、ふとした疑問を口にしてしまった。
「これ…誰だっけ」
私は一人の少年を指さした。
「え?」
サナエは首を傾げる。
「○○くんじゃない」
「だ、誰?」
私も首を傾げた。
「覚えてないの?そりゃ、変な時期に転入して卒業前に転校しちゃったけど」
「でも、あんたしょっちゅう口喧嘩してたじゃん」
サナエはそう言うと○○くんの話題から離れ、最近結婚した友人の話に移った。
私も話の流れに乗ったが、○○くんという少年の事は心の片隅に引っ掛かったままだった。
最初のコメントを投稿しよう!