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凜の質問に、携帯以外何も見ていなかった母親は案の定怯み、男の子も「えっと、えっと、ここ!」と迷ってからほっぺを指した。
「そっかそっか、ここを叩かれたのか。で、誰に? ちなみに、おばちゃん全部見てたからね」
ニコニコ笑顔を絶やさず凜が聞くと、男の子は「あ……」と目をそらした。その目には、先ほど大量に流れていた涙はひとかけらもない。
凜は母親が何か口を出す前にすかさずたたみかけた。
嘘をつける子に、容赦はいらない
「君さ、ずーっとふざけて色んな子にぶつかりながら走ってたよね。わざとぶつかりながら。でさ、ウチの子によけられたんだよね。で、もっかい突進したよね? けど、よけられてこけたんだよね? 君がこけたから、この子は君の頭をなでなでしたのは見ていたよ。そのあと君は大きな声で泣いていたね。で、叩かれたー!ていったよね? 何で? 頭だったらなでなでがいたかったのかな、と思ったけど、ほっぺなんだよね、叩かれたの。じゃあ、この子じゃないと思うんだけど。違う? ねぇ? どう?」
終始笑顔で言い切ったのが怖かったのか。
それともウソがばれて焦ったのか。
それとも、凜の勢いが恐ろしかったのか。
男の子は「ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい」と壊れたおもちゃのように繰り返しながら今度は本気で涙ぐみ、何も言えなくて口だけ開いている母親の腕に縋りついていた。
「え? おばちゃんに謝るの? それ、あってる?」
首をかしげながら凜が聞くと、男の子ははっと翔を見て「ごめんなさい!」と頭を下げた。
「そうだね、嘘をついてごめんなさいだね。でも、他の人にも謝ろうね。ぶつかってごめんなさいって」
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