3人が本棚に入れています
本棚に追加
「ねぇ、トモキ……私たち別れよっか」
「えっ? なんで? 急にどうしたの?」
素っ頓狂な声を上げるトモキも愛しい。
「ずっと、考えてたの。これからのこと」
「うん」
「トモキはね、これからどんどん有名になって大変だと思う」
「そんなのまだ先の話だろ」
「先かどうかなんて関係ない。いずれ来るんだから。トモキもそうなりたいってずっと言ってたじゃない」
「それはそうだけど。まだどうなるかわからないよ」
「ううん。トモキは必ずそうなるって信じてる。だけどね、私にはその覚悟はないの。夢を叶えたあなたについて行く自信がない」
「なんだよそれ……」
「トモキ、私ね……、夢を追いかけてるトモキが好きだったんだ」
不思議なほど、淀みなく流れ出る嘘を固めて、私はトモキから逃げた。
本当のさよならの理由は彼には言えるはずがないから。
トモキのシミになりたい、なんて……。
「だから…… 」
私を愛してくれている内に、私が薄まる前に。
「……別れましょう」
止めて欲しかった。
追いかけて欲しかった。
だけど、私の夢は叶わない。
最初のコメントを投稿しよう!