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どうにか逃げ出そうと足を動かすが、腰を掴まれ身動きが取れない。
「嫌だってばっ。さっきので、チャラって言っただろっ?」
「そうだね。言った」
「じゃあ」
「……。一つ、諳んじたものを披露しようか」
赤玉を口から取り出して、巽が笑う。
一体何を暗記したのか、ここで意味不明なことを口にする巽に益々嫌な予感が強まった。
「巽へ。急にこんな手紙を出して、ゴメン。変に思っただろ? 実は俺、お前に伝えないといけないことがあって」
「っ? え、ちょ……嘘ぉッ!」
「三年間、お前のお陰で高校生活すごく楽しかった。俺の友達でいてくれて、本当にありがとう。俺にとって親友っていえるような相手はお前だけだった。お前は頭も良くてスポーツ万能で、皆もお前のことが大好きだったのに」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁーーッ!」
「なんの摂り得もない俺とずっと一緒にいてくれたよな。嬉しかった。お前のお陰で大学も目標より上のランクに合格できたし、お礼しかないよ。なのに俺、お前に謝らないといけないことが一つあるんだ。高校二年の秋頃からのことなんだけど、俺な、その頃から」
「わか、分かった! 分かったからッ! なんでもするってばぁ――ッ!」
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