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とぼけて言えば、スルリ、スウェットの隙間から長い手指滑り込んできた。
軽く仰け反った喉を撫でられ、素直に肌が粟立つ。なぞられる臍回り。傾けた顔に耳朶を食まれて、昂太は手にした蜜柑を落としてしまった。
「お、い……ここ、炬燵……」
腹を撫でていた手のひらが、無遠慮に下着の中へと入ってくる。
小さな炬燵が、大きく揺れた。
足が同じ方向を向いていないとぶつかってしまうので、二人で使う時はいつも膝抱っこだ。
実家から持ってきたという藍色のどてらを羽織った巽が、楽しげに炬燵側に逃げた昂太を追う。
「ベッド行こうって、なぁ……巽?」
「ンー……。なんかさぁ」
「?」
「蜜柑の匂いさせてて、こう……クる」
「んだ、それ」
スイッチの入れ方が、サッパリ分からない。
柑橘系の匂いといえば昂太的に清涼感なイメージがある。それをイランイランのような蠱惑的なものならいざ知れず、あからさまに欲情されるなんて思いもしない。
軽めに誘ったつもりだった。蜜柑を食べてシャワーを浴びたらベッドへ行こうと。
これはまさかの急展開。炬燵は勘弁してほしい。シミになったらどうする。
この展開に目を白黒させていると、後ろの巽が言葉を継いだ。
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