弐日目 1

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 僕はようやく平静を取り戻し、右手の饅頭を食べながら何でもないように聞いた。 「......昨日のことだけど」 「んー、美味しい。やっぱりウチの饅頭が世界一だね!」  露骨に話を聞かない振りをする彼女に、返事が返ってくる事をそんなに期待していなかった僕は頷く。 昨日のことは、恐らく島の人たちも知らない彼女と僕だけの秘密、という事だろう。  だが、僕はもう一つ、彼女に話しておかなければならない事があった。 「今日、資料館に行ってきた。興味深い話をたくさん聞いてきたんだけど......話したいことはそれじゃない。そこで僕は、奇妙な男に出会った」 「奇妙な男?」  彼女は興味を示したようで、饅頭を食べる手を止めた。僕はほっとして、話を続ける。 「そう。その男は、袴に着物、頭には烏帽子という明らかに浮いた格好をしていた。しかも、大シャチ様の資料を見ながら『もうすぐこの島は終わりだ』と呟いていたんだ」 「確かに変だね。でも、それがどうかしたの?」 「......僕は、そういう格好をしている人を他にも知ってる。あれは、陰陽師の正装だ」  やけに嫌な予感がしていた。  もちろん、思い過ごしという事も十分にあり得る。だが、このまま放っておいてはいけない気がしていた。 「陰陽師って......何?名前は聞いたことあるけど」  彼女は怪訝そうな顔をしている。普通の人の反応はそんな所だろう。  今日彼女に会えてよかった、と僕は思った。これから彼女には、恐らく一から説明しなければならない。  調べる時間はすでに全くと言っていいほど足りないのだから、少しでも多くの時間を調査に割きたい。そのためには、今日説明を済ませておくのがベストだ。     
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