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「やっほー、ハル君元気だった?」
「昨日会ったばかりだろ」
待ち合わせの饅頭屋......つまり姫の家の前て軽く手を振る。
僕の話を全部疑っているとすれば今日一日を僕に付き合って棒に振ったりはしないはずだが、全部信じていたとしたらこの態度はなかなか取れない。
つくづくミステリアスな女だ。肝心の色気は全くないが。
というか、店の前で彼女の母親に物凄く好奇の目で見られたような気がするのだが、何か訂正しなくて大丈夫だろうか。
「どう?何かわかった?」
「うーん、正直さっぱり。この島と陰陽道に別段繋がりもないみたいだし。......あ、でも、村長さんなら何か知ってるかと思って連絡取っといたよ。今からなら空いてるって」
今からとは随分唐突だが、他に手がかりのない僕らからすれば願ったり叶ったりだ。島の歴史にも詳しそうな村長なら、ひょっこり重大な事実を話してくれることも十分にあり得る。
「分かった。それなら早速向かおう。案内してくれるかい?」
「あっ、その前に」
そう言って姫が店の奥から持って来たのは、焼いたばかりとみられる饅頭だった。
「これ食べながら行こっ。どうせ朝ごはんちゃんと食べてないんでしょ?」
「......どうしてそれを」
「わかるよ。ハル君のことならだいたい」
「昨日会ったばかりだろ」
僕はため息をついた。
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