参日目 1

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「やはり......私の息子が、何かしでかしたのか」  村長は観念したかのように椅子に座り込んだ。  滅多に目にしない隅に追いやられていた息子を、それでも守りたかったのか。一回り小さくなったようにも見えるその身体は、悲壮感すら漂わせた。  仕方がないので、事の次第と僕らが持っている仮説を説明する。 「というわけで、まだ何もしていないはずです。......しかし、時間の問題でしょう。村長さん、知っていることを話していただけますね?」 「あぁ......」  呻くように話し始めた彼の話をまとめると、どうやらこういうことらしかった。  村長の息子は、品行方正で頭脳明晰な優等生だった。将来はお飾りの村長を継ぐのではなく、島の外に出て立派に働くのだと言っていたし、皆もそれを信じていた。  それがおかしくなったのは、彼が高校一年生の時......つまりあの写真から一年も経たないうちだった。  彼はインターネットで知り合ったという胡散臭い陰陽師に言葉巧みに操られ、自分も大学卒業後は働きながら陰陽師になると言い出したのだ。  当然村長は激怒し、何度も怒鳴り合いの喧嘩を繰り返したが彼は一歩も折れない。ついに堪忍袋の尾が切れた村長は、彼に高校を中退させ島から身一つで追い出した。  それ以来、彼とは十五年間音信不通だという。 「馬鹿な息子だ。さんざん親に苦労をさせておいて、まだ迷惑をかけようとしている!......ああそうさ、息子は私を恨んでいるだろう。親の金で大学まで通った後、働きながら陰陽師を目指すなどという自分勝手な人生設計が崩れたんだから。だが私をナイフで刺し殺すならまだしも、関係のないこの島を巻き添えにするなど言語道断だ!」  息子のこととなると我を忘れるのか、声を荒らげる村長。おかげで姫は怯えてしまい、僕と村長の会話を聞いていることしかできない。
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