壱日目

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   島に着くとまず僕たちを出迎えるのが、この島の村長とこれから五日間滞在する民宿の人たちだ。  1日に一本しか定期便の来ないような田舎だが、豊かな自然と村民の優しさに惹かれて観光客もそこそこ来る。僕たちが帰ったすぐ後には世界中からお偉いさんが集まるG20が行われるらしい。なぜ知っているのかというと、僕たちの街も自分の事のように盛り上がっていたからだ。  後は確か、不思議な伝説が宿る島でもあり、民俗学者にとっては楽園のような場所だと島津が目を輝かせながら言っていただろうか。  とにかく、僕たち全員を受け入れられるような民宿も、退屈しない程度の土産物屋や観光地も、この島には備わっている。 「湾岸南高校の皆さん、ようこそ鯱神島へ。見渡す限り何もない島ですが、目には見えない魅力が沢山あるので、五日間楽しんでいってください」  そんな村長の簡単な挨拶の後は、民宿で昼食をとった後バスで5分ほど移動して海水浴場へ。定期便の都合でこの島には昼前にしか来られないので、今日はこの後ずっと海水浴、というかなり適当なスケジュールだ。  とはいえ、皆早速持ってきた水着に着替えて思い思いに楽しんでおり、あの調子だとどれだけ遊んでも遊び足らないくらいだろう。これを機に女子と仲良くなろうという不届き者もいるが、残念ながらウチの高校の女子はそんなに暇じゃない。  僕は予定通りパラソルの下で小説を読もうとするが、予想より観光客の数が多く空いているパラソルが見つけられない。しかも笑い声がうるさくて全く集中できないというおまけ付きで、要らないストレスばかり溜まっていく。
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