弐日目 1

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「すなわち、喧嘩両成敗。島を鬼ごと沈めてしまい、これ以上海が傷つくのを止めようとしたのです。  過ちに気づいた人間や鬼が必死に止めてももう遅い。神様のかけた呪いによって、島は今にも沈みそうになりました。  そこで、鬼が神様に頼み込んだのです。自分が犠牲になって、島を救うと」  絵巻物には、鬼が神様に泣きつくシーンが描かれている。その横で一緒に泣いている人間は、気のせいだろうがどことなく彼女に似ていてドキッとした。 「神様はその願いを聞き入れ、鬼を大きな鯱の姿にして、永遠にこの島を守っていく事を誓わせました。それが大シャチ様です。  今でも島には神様の呪いがかかっていて、大シャチ様が島が沈まないように支えてくださっている、という訳です」  神妙な顔をして聞いていた生徒の一人が、人間は結局何もしてないじゃん、と呟いた。  それを聞いた村長は笑って、「だから我々は、大シャチ様をこの島の守り神として、いつまでも忘れないように伝えているのです。それが私たちの償いなのですよ」と言った。
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