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「そうじゃない、だが、覚を撃退した話に共通するのは偶然だ。こちらから何かをして退治したというのは聞いたことがない。それに」
酒坂は言葉に詰まりながらも、ゆっくりと自分の考えを辿っていく。
「やはり妖怪退治、というものはあまりすべきではない、ように思う。私情を挟むつもりはない。お前を見捨てようと言うつもりもない。しかし、こちらから能動的に手を出す存在ではないのだ、本来ならば」
何を言っているのか津野には理解できなかった。そして話している酒坂本人にも説明しづらいことなのだろう。いつもよりも話し方の流麗さにかけていた。
間はやはり考え込んでいる。
「しかし、お前のその体質も説明がつかないな。妖怪の性質の一部を無理矢理写されたというのは」
「そんなことが出来るものなんですか」
間がようやく口を開く。
「聞いたことがない。神話の中ならば、神の力を引き継ぐだとか、加護を受けるだとか、そんな話はいくらでもあるが、妖怪のものとなると」
そう言われても、実際津野には感じられるのだからしょうがない。
酒坂はまた迷いながらも話し始める。
「そう、そうなのだ。実際にあった以上それを否定することが出来ない。極論、彼らを説明するにあたり、あり得ないということがあり得ないのだ。あってしまった以上、行き遭ってしまった以上、それはあり得ることなのだ」
ぬらりひょんの例がそうである。
語られることで生まれるのが妖怪だ。人の想像しうることは、全て妖怪には起こりうることである。
それはもちろん覚にも、そしてそれに行き遭った津野にも例外ではない。
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