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翌日も、一週間後も、一ヶ月後も、誠は男のままだった。
生理現象や慣れないことはあったけれど、男でいることは思っていた以上に快適だった。
仕事は辞めざるを得なかったが、男として再就職できた。
咲良は月に一度、誠の家を訪ねてきた。
「誠と会えませんか」
そう言われるたびに、誠の心は揺れた。
もういっそ、自分が誠だと言ってしまおうか。
けれど、そうしなかったのは、“誠”がどこにいるのかわからなければ、また咲良がくると希望がもてたからだった。
会う回数を重ねれば、咲良と新しい関係を作れるかもしれないと思った。
けれど、咲良は触れることは愚か、半径1メートル以内にも入ってこない。
咲良のために男になったはずなのに、咲良に指一本触れられない。好きだと伝えることも、手を握ることも、咲良を守ることもできない。
「私は何のために……」
咲良に手を振り払われて以来、咲良に近づく勇気が出なかった。
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