その手を離さないで

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 ほら、やっぱり守ってあげなきゃ。 「もう。慣れない格好するから」 「お祭りと言えば、浴衣でしょう?てか、なーんで誠は着てこないのよーう!」  人ごみの中、私は咲良に手を伸ばした。 「ほら、手」  伸ばした手を咲良が握った。  柔らかく、温かな手。  切りそろえた前髪の下に、咲良の大きな瞳が私を捉える。捉えて、離さない。 「誠の手って、本当に綺麗」  咲良は今までこんな顔だっただろうか?  恥ずかしがり屋で、先生の後ろに隠れていた咲良はどこにいった?  妹のように思っていた咲良はいつの間にか、少女から女になっていた。  私と咲良は友達。咲良は私の妹のような存在。  中学生で友達と手をつなぐのは普通だろうか?  急に握った手が恥ずかしくなってきた。すれ違う人を見ていても、同い年の同性が手をつないでいるのは少ない。  手が汗ばんできた。  鼓動が早くなる。  神社の階段のせいじゃない。  恥ずかしい。  けれど、この手を離したくはない。  手のひらの中にすっぽりと包まれる咲良の小さな手。  この手を、ずっと守りたい。  妹としてではなく。  友達としてでもなく。  咲良を守るのは自分。     
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