望んだものと捨てたもの

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 女のときに着ていたタンクトップとショートパンツ。骨格から変わってしまった体型には、女物の部屋着はパッツパツのピッチピチだ。その上、男のシンボルが、はっきりと盛り上がっている。 「え!?あ!?」 「キャーーーー!!!」  咲良が悲鳴をあげた。 「あなた誰!?誠は!?」 「誠は今……」  目の前にいる。  そう言おうとして、やめた。こんな姿で言っても、何の説得力もない。 「あなたもしかして……誠の彼氏?」  盲点だった。自分に彼氏がいるなんて、想像もしたことがなかった。しかし、今はそれが都合がいい。 「そうです」  すると、咲良はほっとした顔をした。 「そう。よかった。誠、彼氏いたんだ」  自分でまいた種だが、誠は咲良がほっとしたことに傷ついた。 「誠ってば、いっつも私の心配ばっかりで、自分のことは後回しなんだもん。でも、そっか。彼氏いたんだ」  そうじゃない。咲良以外に好きな人なんているわけない。 「誠、いますか?連絡つかなくって。昨日もちょっと様子がおかしかったから」 「いないよ。もう、いない」  咲良の知っている誠はもういない。  咲良は形のいい眉をひそめた。 「いないって……どこに行ったんですか?誠に何かあったんですか?昨日の夜から、連絡しても返事がなくて、こんなこと今までなかったのに……」  確かに、今まで咲良の連絡には何をさて置いても、真っ先に返事をしていた。     
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